コホート別リテンション表・可視化ツール

獲得月(コホート)ごとの初期顧客数と、M1〜M6の各時点で残っている顧客数を入力すると、コホートごとのリテンション(残存率)推移を折れ線グラフと一覧表で比較できます。

M6時点のコホートリテンション率ベンチマーク早見表

評価 M6時点の残存率の目安 意味
Excellent 90%以上 エンタープライズ向けSaaSで見られるトップクラスの定着水準。曲線がほぼ横ばいに近い
Good 80〜89% カスタマーサクセス体制が機能している健全な水準
Fair 70〜79% SMB(中小企業)向けSaaSでよく見られる平均的な水準
Poor 70%未満 曲線がなお右肩下がりで、オンボーディング・カスタマーサクセス体制の見直しが必要な水準

※ 顧客セグメント(エンタープライズ向けかSMB・セルフサーブ向けか)によって適正水準は大きく異なります。あくまで一般的な目安としてご利用ください。

コホート別リテンション表とは

コホート別リテンション表は、顧客を「いつ獲得したか」でグループに分け、そのグループが月を追うごとにどれだけ残っているかを並べた表です。このツールでは獲得時点(M0)の顧客数と、M1〜M6の各時点で残っている顧客数をコホートごとに入力すると、各時点の残存率・推移グラフ・M6時点の評価がまとめて得られます。全体の解約率だけを見ていると分からない「いつ獲得した顧客が、どの時点で離れているか」を切り分けられるのが、この表の役割です。

入力の条件は「各時点の残存顧客数が、ひとつ前の時点を上回らないこと」です。いったん解約した顧客が戻ってきた分(リザレクション)を数えたい場合は、それを差し引いた純粋な残存数を入れてください。評価はM6時点の残存率で決まり、90%以上をExcellent、80%以上をGood、70%以上をFair、それ未満をPoorとしています。適正水準は顧客セグメントで大きく変わるため、絶対値よりもコホート間の差を読むことをおすすめします。

コホート別リテンション表の作り方

  1. コホート名と獲得時点の顧客数を入れる 「2026年1月獲得」のように、いつ獲得した集団かが分かる名前を付けます。M0はその時点で契約していた顧客数です。
  2. M1〜M6の残存顧客数を入れる 1か月後、2か月後…と各時点で残っていた顧客数を順に入れます。ひとつ前の時点より大きい値は受け付けません。
  3. コホートを追加して並べる 「コホートを追加」で複数の獲得月を並べられます。単独のコホートを眺めるより、施策の前後で曲線がどう変わったかを比べるのが本来の使い方です。
  4. 曲線の形と評価を読む グラフが横ばいに近づけば定着、右肩下がりが続いていれば離脱が止まっていません。M6時点の評価はその目安として表示されます。

使いこなすためのヒント

  • 同じ月に獲得した顧客をまとめて「コホート」として入力し、時間経過とともに何社残っているかを追跡すると、単月の解約率だけでは見えない「定着までの傾向」がつかめます。
  • 複数のコホートを並べて表示すると、施策変更(オンボーディング改善・価格変更等)の前後でリテンション曲線がどう変わったかを比較できます。
  • 曲線がM3〜M4あたりで横ばいになっていれば「定着した顧客はその後も長く使い続ける」健全なサインです。右肩下がりが続く場合は継続的な離脱要因の調査が必要です。
  • 当サイトのロゴチャーン率計算ツールは単一期間のスナップショットですが、本ツールは時系列の推移を比較したい場合に使い分けてください。

コホート分析が役に立つ場面

オンボーディング施策の効果を測る

施策を入れた月より前と後のコホートを並べると、M1〜M2の落ち方が変わったかが分かります。全体の解約率では埋もれてしまう変化を拾えます。

値上げ・プラン改定の影響を追う

改定後に獲得したコホートだけ曲線が急に落ちていれば、価格と提供価値の釣り合いを見直す材料になります。

顧客セグメントごとに比べる

エンタープライズ向けとSMB向けを別のコホートとして入れると、同じ「解約率」でも適正水準がまったく違うことを数字で確認できます。

経営会議・投資家向けの説明に使う

「解約率◯%」という一言より、コホート表のほうが定着の実態を正確に伝えられます。改善の跡が曲線の形として残るためです。

コホート分析の用語

コホート
同じ時期に獲得した顧客のまとまりです。もとは疫学で「同じ経験を共有する集団」を指す言葉で、SaaSでは獲得月ごとの集団を指すことがほとんどです。
リテンション(残存率)
獲得時点の顧客数のうち、その時点でまだ利用を続けている割合です。M6で70%なら、獲得から半年後に10人中7人が残っている計算になります。
M0〜M6
獲得時点を M0 とし、そこから何か月経過したかを表す記号です。M6は獲得から6か月後を指します。
チャーン(解約率)
リテンションの裏返しで、離れていった顧客の割合です。リテンション70%はチャーン30%と同じことを言っています。
リザレクション
いったん解約した顧客が再び契約することです。このツールは純粋な残存数を前提としているため、戻ってきた分は差し引いて入力してください。
コホート曲線の横ばい化
月を追うごとの減少が止まり、曲線が平らになることです。定着した中核顧客が残っている状態を示し、ここが高い位置で平らになるほど事業は安定します。

よくある質問

同じ時期(月や週など)に獲得した顧客のグループを「コホート」と呼び、そのグループが時間の経過とともにどれだけ残っているか(リテンション)を追跡する分析手法です。全顧客をまとめて見るより、獲得時期ごとの違いや施策の効果が把握しやすくなります。

獲得直後は急に下がり、その後横ばいに近づく「フラット化」した形が理想的とされます。フラット化が早いほど、その顧客層の中に長期定着するコアユーザーが多いことを示します。右肩下がりが続く場合は継続的な離脱リスクを抱えています。

M0は獲得した時点そのものを指すため、その時点の顧客数を基準(分母)とする残存率は定義上必ず100%になります。M1以降の残存率は、このM0の顧客数と比較してどれだけ残っているかを示します。

ロゴチャーン率は単一の期間(例: 直近1か月)だけを見るスナップショット指標です。コホートリテンションは獲得時期の異なる複数のグループを時系列で追跡するため、施策の効果測定や長期的な傾向把握に向いています。目的に応じて使い分けてください。
ツールくん

余談ですが ― コホート分析はなぜ「時期」で区切るのか

SaaS企業の経営指標として広く使われる解約率・継続率の多くは、ある1時点のスナップショットにすぎません。しかし顧客は獲得された時期によって、その後の定着傾向が大きく異なることがあります。たとえばオンボーディングのフローを改善した後に獲得した顧客は、それ以前のコホートよりも定着率が高くなる、といった変化が典型例です。コホート分析は、こうした「いつ獲得したか」による違いを可視化するために生まれた手法です。

この考え方はもともとSaaS特有のものではなく、疫学(同じ年に生まれた集団の生存率を追跡する研究)に由来するとされています。ビジネスの文脈に転用される過程で、コホートは「生まれた年」ではなく「顧客として契約した月」という単位に置き換えられ、投資家向け資料やプロダクト改善のダッシュボードで定番の可視化パターンとして定着しました。

リテンション曲線が時間とともに横ばいに近づく現象は「コホートのフラット化(flattening)」と呼ばれ、投資家がSaaS企業を評価する際の重要な着眼点のひとつです。曲線がフラット化せずに右肩下がりが続く場合、新規獲得を止めた瞬間に顧客基盤全体が縮小に転じるリスクを抱えていることを意味するため、成長投資の是非を判断する材料としても使われます。