ストラクチャード・セトルメント買取価値計算(Structured Settlement Calculator)
訴訟の賠償金等を長期の分割払い(ストラクチャード・セトルメント)で受け取っている人が、買取業者から提示された一時金がどのくらいのディスカウント率に相当するかを試算できる無料ツールです。
ストラクチャード・セトルメント買取とは
ストラクチャード・セトルメント(structured settlement)とは、交通事故等の人身傷害訴訟の和解金・賠償金を、一括ではなく長期にわたる定期払いとして受け取る取り決めです。米国ではJ.G. Wentworthなどの「買取業者(ファクタリング会社)」が、この将来の定期払いを受け取る権利を、割り引いた一時金と引き換えに買い取るサービスを提供しています。このツールは、その買取提示額が将来の受取額に対して実質どれくらいの年率(ディスカウント率)を意味するのかを逆算し、業界の一般的な水準と比較できるようにするものです。
買取業者の広告や見積書には「〇〇ドルで買い取ります」という金額しか書かれていないことが多く、それが将来受け取るはずだった総額に対してどの程度割り引かれているのかは、自分で現在価値の計算をしないと分かりません。このツールに受取額・頻度・残り期間・提示された一時金を入力するだけで、その一時金が数学的にどのディスカウント率に相当するかを瞬時に算出し、複数の見積もりを同じ基準で比較できるようにします。
ストラクチャード・セトルメント買取価値計算の使い方
- 1回あたりの受取額を入力する 和解金の分割払いとして、毎回いくら受け取っているかを入力します。
- 受取頻度を選ぶ 毎月・四半期ごと・毎年のいずれかを選びます。
- 残りの受取期間を入力する 和解契約で定められた、これから受け取る予定の年数を入力します。
- 買取業者の提示額を入力する 買取業者から提示された一時金の金額を入力すると、実質のディスカウント率が自動で計算されます。
使いこなすためのヒント
- 買取業者の広告に出てくる金額だけを見て判断せず、このツールで実質ディスカウント率に変換してから他社と比較しましょう。金額が大きく見えても、期間や受取頻度が違えば単純比較はできません。
- 裁判所の承認プロセスには通常45〜60日程度かかるとされています。急ぎで現金が必要な場合は、この期間も見込んでスケジュールを立てましょう。
- 受け取っている支払いのすべてではなく一部だけを売却する「パーシャルセール」も選択肢の一つです。将来の収入源を完全に手放したくない場合は、買取業者にこの選択肢があるか確認してみましょう。
- このツールが前提とする9〜18%というレンジはあくまで一般的な目安です。あなたの契約の信用力や市場環境によっては、これより有利・不利な提示になることもあります。
こんなときに使えます
買取業者から届いた見積もりが妥当か判断したいとき
提示額が示す実質ディスカウント率を、業界の一般的なレンジ(年9〜18%程度)と比較して有利・不利を判断できます。
複数の買取業者の見積もりを比較したいとき
各社の提示額をこのツールに入力し、実質ディスカウント率を並べて比較すれば、金額の大小だけでなく条件面での有利・不利が分かります。
一部だけ売却(パーシャルセール)を検討しているとき
残り期間の一部だけを売却する場合も、その部分の受取額・期間を入力すれば同じ考え方で試算できます。
訴訟の和解交渉で分割払いの条件を検討しているとき
将来売却する可能性も踏まえ、提示された分割払いの条件が将来どの程度の現在価値になるかの見当をつけられます。
用語集
- ストラクチャード・セトルメント(Structured Settlement)
- 人身傷害訴訟等の賠償金・和解金を、一括の現金ではなく長期にわたる定期払いとして受け取る取り決めです。多くの場合、生命保険会社が発行する年金(アニュイティ)契約によって支払いが保証されます。
- ファクタリング(買取)
- 将来の定期払いを受け取る権利を、割り引いた一時金と引き換えに第三者の買取業者へ売却する取引です。米国ではJ.G. Wentworth・Peachtree Financial等が代表的な買取業者として知られています。
- ディスカウント率
- 将来の定期払いの合計額を、買取業者が提示する一時金まで割り引く際に使われる年率です。この数値が高いほど、買取業者の取り分が大きく、売却する側の受取額は相対的に少なくなります。
- 現在価値(Present Value)
- 将来受け取る予定のお金を、ディスカウント率を使って「今の価値」に換算した金額です。
- 裁判所の承認(Court Approval)
- 米国の多くの州では、ストラクチャード・セトルメントの売却契約が有効になるには、その売却が売主の利益にかなうことを裁判官が審査し承認する手続きが義務付けられています。
- パーシャルセール(部分売却)
- 残りの受取権利すべてではなく、一部の回数・一部の期間分だけを買取業者に売却する取引形態です。将来の収入源を完全には手放したくない場合に選ばれます。
よくある質問
余談ですが ― 賠償金を「時間をかけて受け取る権利」に変えた歴史
ストラクチャード・セトルメントという仕組みが米国で広まったのは1970年代のことです。それ以前は、人身傷害訴訟の賠償金は一括の現金として支払われるのが一般的でしたが、大金を一度に受け取った原告の多くが数年のうちに使い果たしてしまうという問題が社会的に注目されるようになりました。とくに重い後遺障害を負った未成年の原告が、成人した頃には賠償金を使い切ってしまい、生涯にわたる医療費を賄えなくなるケースが問題視されたことが、長期の定期払いへ切り替える動きを後押ししたとされています。
米国とカナダの税務当局は1980年代にこの仕組みを後押しする税制上の優遇措置を導入し、ストラクチャード・セトルメントとして受け取る賠償金には所得税がかからないという扱いを明確にしました。一括の現金で受け取っても非課税である点は同じですが、生命保険会社が発行する年金契約を通じて長期にわたり分散して支払うことで、浪費のリスクを抑えつつ非課税のメリットを維持できる設計になっています。
一方で、この「時間をかけて受け取る権利」を売りたいというニーズも早くから存在し、1990年代以降にJ.G. Wentworthをはじめとする買取業者(ファクタリング会社)の市場が急成長しました。当初は原告本人の意思を無視した強引な勧誘や、極端に低い買取価格を提示する業者が問題視されたため、各州が相次いで「ストラクチャード・セトルメント保護法」を制定し、売却には裁判官による承認を義務付ける規制が整えられていきました。今日でも、テレビCMで見覚えのある買取業者のブランド名の裏には、こうした消費者保護をめぐる歴史的な経緯があります。