バックドアRoth IRA計算ツール(Pro-Rata Rule対応)

既存のTraditional IRA残高・非控除拠出額・変換額を入力すると、バックドアRoth IRA変換で課税対象になる金額をPro-Rata Rule(按分ルール)に基づいて試算します。

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バックドアRoth IRAとは

バックドアRoth IRAは、所得制限(MAGI phase-out)によりRoth IRAへ直接拠出できない高所得者が使う手法です。まず所得制限のないTraditional IRAへ非控除(税控除を受けない、after-taxの)拠出を行い、その資金をRoth IRAへ変換します。変換自体には所得制限がないため、正規のRoth IRA拠出枠を実質的に迂回できることから「裏口(バックドア)」と呼ばれています。

ただし、この手法には見落とされやすい落とし穴があります。変換額のうち課税対象になる割合は、今年拠出した非控除分だけを基準に決まるのではなく、本人が保有する全てのTraditional/SEP/SIMPLE IRA残高を名寄せした上で決まる「Pro-Rata Rule(按分ルール、IRC §408(d)(2))」が適用されます。過去の401(k)からのロールオーバー等で税引き前のIRA残高がある場合、変換額の一部が課税対象になり、想定より税負担が大きくなることがあります。

使い方

  1. 前年までの繰越基礎額を入力する 過去のForm 8606に記載された非控除拠出額の累計を入力します。初めての場合は0のままで構いません
  2. 今年の非控除拠出額を入力する 今年Traditional IRAへ行った、税控除を受けない拠出額を入力します
  3. 年末時点の税引き前IRA残高を入力する 本人名義の全Traditional/SEP/SIMPLE IRA口座の年末残高合計(今年の変換額を除く)を入力します
  4. 今年の変換額を入力する 今年Traditional IRAからRoth IRAへ変換した金額を入力すると、課税対象額が自動的に計算されます

使いこなすためのヒント

  • 変換は年をまたいで行うこともできますが、Pro-Rata Ruleの計算はあくまで「変換した年の年末残高」を基準に行われる点に注意してください。
  • 複数のTraditional/SEP/SIMPLE IRA口座を持っている場合、按分計算では個々の口座を分けず、必ず全口座の残高を合算して計算します。
  • 変換額には連邦税だけでなく、居住する州の州税がかかる場合もあります。本ツールは連邦税ベースの按分割合のみを試算します。
  • 本ツールの計算は簡易的な試算です。正確な税務上の扱いは、税理士や公認会計士による確認、またはIRS Form 8606最新版の指示に従うことをおすすめします。

活用シーン

高所得者がRoth IRAへの拠出手段を検討する

MAGIによる所得制限でRoth IRAへ直接拠出できない場合の、代替手段の税負担を事前に試算できます

過去のロールオーバーIRAがある場合の税負担を把握する

会社を退職した際に401(k)をTraditional IRAへロールオーバーしている場合、その残高がバックドアRothの税負担にどう影響するかを確認できます

IRAの資金移動(ロールオーバー)を先に検討する材料にする

税引き前残高を勤務先の401(k)(money.wealth.401k_calculator)へ逆ロールオーバーすることで、Pro-Rata Ruleの影響を減らせるかどうかの試算材料になります

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用語集

バックドアRoth IRA
所得制限でRoth IRAへ直接拠出できない人が、非控除のTraditional IRA拠出を経由してRoth IRAへ資金を移す手法です。
Pro-Rata Rule(按分ルール)
Roth変換額のうち課税対象になる割合を、本人が保有する全てのTraditional/SEP/SIMPLE IRA残高に占める非控除拠出額の割合で決めるIRSの規則です(IRC §408(d)(2))。
非控除拠出(Nondeductible Contribution)
所得制限等により所得控除を受けられないTraditional IRAへの拠出です。Form 8606で税務当局に申告し、基礎額として追跡します。
Form 8606
非控除拠出額・変換額・按分計算の結果を税務申告時に記録するIRSの様式です。基礎額は複数年にわたって繰り越されるため、毎年正確に記入・保管する必要があります。
基礎額(Basis)
過去に非控除で拠出した金額の累計で、将来の引き出し・変換時に非課税として扱われる部分の原資になります。
名寄せ(Aggregation Rule)
Pro-Rata Ruleの計算では、個々のIRA口座を別々に扱わず、本人が保有する全てのTraditional/SEP/SIMPLE IRA残高を1つの口座であるかのように合算して計算します。

よくある質問

いいえ、なりません。Pro-Rata Ruleにより、変換額のうち課税対象になる割合は、今年の拠出分だけでなく、本人が保有する全てのTraditional/SEP/SIMPLE IRA残高を名寄せした上で決まります。既存の税引き前残高がある限り、変換額の一部は必ず課税対象になります。

勤務先の401(k)プランがIRAからの逆ロールオーバー(Reverse Rollover)を受け入れている場合、税引き前のIRA残高を401(k)へ移すことで、按分計算の分母から除外できる可能性があります。詳細は税理士にご相談ください。

Roth IRAは対象外です。対象になるのはTraditional IRA・SEP IRA・SIMPLE IRAの残高のみで、これらは名寄せして合算されます。企業型401(k)やSolo 401(k)の残高は、IRAとは別勘定のため通常は対象外です。

いいえ、Pro-Rata Ruleは納税者本人名義の口座単位で計算されます。夫婦であっても、配偶者のIRA残高は本人の按分計算には影響しません。
ツールくん

余談ですが ― 「裏口」という名の合法な抜け道

バックドアRoth IRAという呼び名は、正式な税法上の用語ではありません。2010年にRoth変換の所得制限(当時は年収$100,000未満に限定されていました)が撤廃されたことをきっかけに、ファイナンシャルプランナーやブロガーたちが「高所得者が正規の拠出枠を迂回してRoth IRAへ資金を移せる抜け道」という意味を込めて名付けた通称です。IRS自身がこの用語を使うことはありませんが、税務専門家の間ではすっかり定着しています。

興味深いのは、この手法がグレーゾーンではなく完全に合法だと、IRSの公式ガイダンスやForm 8606の説明書で明確に認められている点です。実際、2018年の税制改正(Tax Cuts and Jobs Act)の議会報告書には、バックドアRoth変換を禁止しない立法者の意図が明記されており、租税回避策として問題視されているわけではありません。ただし、議会が今後この手法を制限する法案を検討したことは複数回あり、将来的に制度が変更される可能性は残っています。

日本には所得制限による拠出制限という概念自体があまりなく(iDeCoは職業区分による拠出上限のみ)、この種の「迂回策」が制度上必要になる場面は限定的です。米国の税制が所得再分配的な観点から高所得者への優遇制度を制限する一方、抜け道が制度設計上残り続けているという構造は、日本の制度との比較で見ると興味深い対照といえます。

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