ブラジル退職金・解雇精算金計算(Cálculo de Rescisão Trabalhista CLT)

ブラジルの解雇精算金(rescisão trabalhista)を、月額基本給・入社日・最終勤務日・解雇の種類から自動計算します。saldo de salário・13次給与比例分・有給休暇比例分・FGTS残高への40%/20%の罰金まで内訳を試算できます。

解雇・退職の種類別 権利の違い早見表

解雇・退職の理由によって、aviso prévio・FGTS罰金・13次給与や有給休暇の比例分の受給有無が大きく変わります。

種類 aviso prévio FGTS罰金 13次給与・有給休暇比例分
会社都合解雇(sem justa causa) 全額 40% あり
合意解雇(acordo) 半額 20% あり
自己都合退職 なし なし あり
懲戒解雇(justa causa) なし なし なし(繰り越し分のみ)

合意解雇(acordo)はFGTS残高の80%まで引き出せますが、失業保険(seguro-desemprego)を受給できません。懲戒解雇はFGTS残高自体を引き出せません。

ブラジルの解雇精算金(Rescisão Trabalhista)とは

ブラジルで雇用契約が終了すると、労働法CLT(Consolidação das Leis do Trabalho)に基づき、解雇月に実際に勤務した日数分の給与(saldo de salário)に加え、13次給与の比例分(décimo terceiro proporcional)・有給休暇の比例分(férias proporcionais、1/3の憲法加算込み)・繰り越された未消化の有給休暇(férias vencidas)など、複数の精算金(verbas rescisórias)を合算して支払う義務が雇用主に生じます。CLT第477条により、これらの支払いは契約終了から10日以内に行わなければなりません。

さらに重要なのが、勤続期間中に雇用主が毎月給与の8%を積み立ててきたFGTS(勤続保証基金)の扱いです。会社都合の解雇(sem justa causa)では、積立残高の40%に相当する罰金が上乗せされ、残高全額と合わせて引き出せます。一方、自己都合退職(pedido de demissão)や懲戒解雇(justa causa)ではこの罰金は発生せず、FGTS残高自体も原則として引き出せません。2017年の労働改革で新設された合意解雇(acordo、CLT第484-A条)は、この中間に位置し、罰金は半分(20%)、残高は80%まで引き出せるという折衷的な制度です。このツールは、これら4種類の解雇・退職理由それぞれについて、受取見込み総額を試算します。

この計算に使っている基準

税率・保険料率などの法定の値は、次の公的機関が公表しているものを使用しています。制度改正により変わることがあるため、重要な判断をされる際は一次情報もあわせてご確認ください。

解雇精算金計算の使い方

  1. 月額基本給を入力する 税・社会保険料控除前の月額基本給(レアル)を入力します。
  2. 入社日・最終勤務日を入力する 勤続年数がaviso prévioの日数・13次給与や有給休暇の比例分に影響します。
  3. 解雇・退職の種類を選ぶ 会社都合解雇・合意解雇・自己都合退職・懲戒解雇の4種類から、実際の状況に近いものを選びます。
  4. aviso prévio・予告履行の詳細を入力する 選んだ種類に応じて、予告を金銭で受け取るか、予告期間を履行したかを入力します。
  5. 受取見込み額の内訳を確認する 現金で支払われる精算金と、FGTS残高・罰金の内訳、受取見込み総額が表示されます。

使いこなすためのヒント

  • aviso prévioの日数は勤続年数に応じてLei 12.506/2011に基づき増え、基本30日に勤続1年ごとに3日が加算され、最大90日(勤続20年以上)になります。
  • FGTS積立残高はこのツールでは簡易推定です。正確な金額はCaixa Econômica Federalの公式アプリ「FGTS」で確認できます。
  • 合意解雇(acordo)は2017年の労働改革(Lei 13.467/2017)で新設された比較的新しい制度で、それ以前は労使が実質的に合意していても、書類上は会社都合解雇として処理せざるを得ませんでした。
  • 13次給与比例分・有給休暇比例分は、その年(または権利発生期間)に15日以上働いた月を1か月分として計算する実務慣行に基づいています。
  • このツールは月額基本給のみを対象とし、残業代・手当・賞与など給与の変動要素は含めていません。実際の受取額はこれらを踏まえた雇用主の計算と異なる場合があります。

こんなときに使えます

会社都合で解雇され、受取額を事前に把握したい

通知を受けてから実際の支払いまでの間に、おおよその受取見込み額を試算できます。

転職のため自己都合退職を考えている

自己都合退職ではFGTS罰金が発生しない点、予告を履行しないと控除が生じる点を事前に確認できます。

会社から合意解雇(acordo)を提案された

会社都合解雇と比べてaviso prévio・FGTS罰金がどれだけ変わるかを試算し、条件交渉の材料にできます。

人事・経理担当者が退職者ごとの精算コストを概算したい

入社日・最終勤務日・解雇理由を切り替えるだけで、複数の従業員パターンをすばやく試算できます。

用語集

rescisão trabalhista(解雇精算金)
雇用契約の終了に伴い雇用主が支払う各種手当・給与の総称です。解雇・退職の理由によって発生する項目・金額が変わります。
FGTS(勤続保証基金)
雇用主が毎月給与の8%を従業員名義の口座へ積み立てる制度です。会社都合解雇では残高の40%(合意解雇では20%)の罰金が上乗せされます。
aviso prévio(解雇予告)
解雇・退職の意思を事前に通知する制度です。会社都合解雇では勤続年数に応じてLei 12.506/2011に基づき30〜90日分の手当(indenizado)または勤務による消化(trabalhado)が選べます。
13次給与(décimo terceiro salário)比例分
ブラジルで年1回支給される法定賞与のうち、退職までにその年働いた月数に応じて按分された金額です。
férias proporcionais(有給休暇比例分)
現在の権利発生期間(período aquisitivo)中に働いた月数に応じて按分された有給休暇手当で、1988年憲法に基づく1/3の加算が上乗せされます。
férias vencidas(繰り越し有給休暇)
前の権利発生期間中に取得できなかった、繰り越し済みの有給休暇のことです。現在の期間の比例分(férias proporcionais)とは異なり、解雇理由を問わず必ず支払われる既得の権利で、同じく1/3の憲法加算が適用されます。
justa causa(懲戒解雇)
重大な違反行為を理由とする解雇で、従業員はsaldo de salárioと繰り越し有給休暇以外のほとんどの権利を失います。

よくある質問

会社都合解雇(sem justa causa)はaviso prévio・FGTS罰金40%が全額発生し、FGTS残高全額を引き出せます。合意解雇(acordo、CLT第484-A条)は労使双方の合意で成立し、aviso prévioとFGTS罰金はいずれも半分(罰金は20%)になりますが、残高の80%まで引き出せます。ただし合意解雇では失業保険(seguro-desemprego)を受給できません。

FGTS残高自体は口座に残りますが、原則として引き出すことはできず、40%(または20%)の罰金も発生しません。ただし13次給与比例分・有給休暇比例分は自己都合退職でも受け取れます。

aviso prévio・13次給与比例分・有給休暇比例分・FGTS残高の引き出し・FGTS罰金のすべてを失います。受け取れるのはsaldo de salário(解雇月の勤務日数分の給与)と、繰り越された未消化の有給休暇(férias vencidas)+1/3加算のみです。

CLT第477条により、契約終了日から10日以内に全額を支払う義務があります。遅延した場合、雇用主には罰則が科されます。

いいえ。このツールが計算するのは額面(総支給額)です。saldo de salário・13次給与比例分はIRRF(源泉所得税)の課税対象ですが、本ツールは実際の源泉徴収額の計算までは行いません。
ツールくん

余談ですが ― なぜFGTSには「40%の罰金」があるのか

FGTS(勤続保証基金)は1966年、それまでブラジルの労働者を守っていた「estabilidade decenal(10年勤続安定制度)」という別の仕組みに代わる制度として導入されました。10年勤続安定制度は、同じ会社に10年以上勤めた従業員を事実上解雇できなくする強力な保護でしたが、その分、雇用主が10年目手前で従業員を解雇してしまうインセンティブを生み、かえって長期雇用を妨げているという批判がありました。FGTSは、この硬直的な保護を、毎月の積立という柔軟な仕組みに置き換える狙いで生まれた制度です。

会社都合解雇の際にFGTS残高へ40%の罰金が上乗せされるのは、単なる従業員への補償という意味合いだけでなく、雇用主に対して安易な解雇を思いとどまらせる経済的な抑止力としての機能も持たされています。1988年憲法の制定時、この罰金は当初10%程度でしたが、後の法改正で40%まで引き上げられ、現在の水準になりました。

合意解雇(acordo)という選択肢がCLTに正式に加わったのは2017年の労働改革でのことです。それ以前も、労使双方が実質的に合意の上で契約を終了させるケースは実務上珍しくありませんでしたが、法律上の受け皿が会社都合解雇か自己都合退職の二択しかなかったため、多くの場合は労使が結託して「会社都合解雇」の体裁を取り、本来受けられないはずの失業保険を不正に受給するという問題が指摘されていました。合意解雇の新設は、このグレーゾーンだった実務慣行に、正式な法的な受け皿を与えたものだと言えます。