イギリス手取り計算(UK Take-Home Pay Calculator)
イギリスの額面年収から所得税(Income Tax)・国民保険料(National Insurance)・学生ローン返済額を差し引いた手取り額を無料で試算。スコットランド独自の税率にも対応。
イギリス手取り計算とは
額面年収を入れると、所得税(Income Tax)・国民保険料(National Insurance)・学生ローンの返済額を差し引いた手取りを試算できるツールです。スコットランド独自の税率にも対応しており、イングランド・ウェールズ・北アイルランドとの違いをそのまま比べられます。
まず知っておきたいのが、年収10万ポンドを少し超えたあたりに現れる急な負担増です。 課税所得が10万ポンドを超えると、基礎控除にあたる個人手当(Personal Allowance)が超過額2ポンドにつき1ポンドずつ削られていきます。その結果、おおよそ10万ポンドから12万5,140ポンドの区間では、実効的な限界税率が60%に達します。この帯では昇給や賞与の手取りへの反映が極端に鈍くなるため、年金拠出を増やして課税所得を10万ポンド未満へ戻す対応が実務上よく取られます。
もう一つ、所得税と国民保険料は計算の土台が違います。 所得税は年間の累計で調整されるのに対し、国民保険料は給与支払いの期間ごとに独立して計算されます。そのため賞与の月にまとまった額を受け取ると、その月だけ高い率の区間に入り、年末に均されることもありません。月々の額面が不揃いな働き方では、同じ年収でも年間の国民保険料が変わり得ます。
なお税率・しきい値は毎年の予算で改定されます。この試算は目安であり、正確な金額はHMRCの案内でご確認ください。
この計算に使っている基準
税率・保険料率などの法定の値は、次の公的機関が公表しているものを使用しています。制度改正により変わることがあるため、重要な判断をされる際は一次情報もあわせてご確認ください。
- 英国所得税(基礎控除・累進税率帯) — 英国政府(GOV.UK) 2026-04〜2027-04 適用 / 最終確認 2026-09-06
- 英国国民保険(Class 1・従業員負担分) — 英国政府(GOV.UK) 2026-04〜2027-04 適用 / 最終確認 2026-09-06
- スコットランド所得税の税率帯(2026/27年度) — 英国政府(GOV.UK) 2026-04〜2027-04 適用 / 最終確認 2026-10-18
このツールの使い方
- 額面年収を入力する 賞与を含めた年間の総支給額を入れると、実態に近づきます。
- 課税地域を選ぶ スコットランドは独自の税率区分を持つため、ここで結果が変わります。
- 学生ローンのプランを選ぶ 返済の開始時期によってプランが分かれ、しきい値と料率が異なります。
- 内訳を読む 所得税・国民保険料・学生ローンのどれが重いかが分かります。
使いこなすためのヒント
- 所得が£100,000〜£125,140の範囲にある場合、追加で稼いだ£1ごとに税金と基礎控除の逓減を合わせて実質60ペンスが失われます。本ツールはこの区間を自動的に反映します。
- 学生ローンと大学院ローンの返済額はそれぞれ別のしきい値で計算されて合算されるため、両方の返済がある場合は片方だけの場合より手取りが明確に減ります。
- スコットランド所得税は所得税額のみに影響し、国民保険料や学生ローンのルールは英国の他地域と全く同じです。
- 給与サクリファイス方式の年金拠出は所得税・国民保険料の計算前の課税対象額を減らしますが、本ツールのようなシンプルな試算では反映されないため、正確な影響は給与明細で確認してください。
- 婚姻控除(Marriage Allowance)を使うと、所得の低い配偶者が余った基礎控除の最大£1,260を配偶者・シビルパートナーへ移転でき、夫婦合算の税負担を下げられる場合がありますが、本ツールは各自の所得を独立して扱っています。
こんなときに使えます
求人の条件を比べるとき
額面だけでは比較になりません。 地域・年金・学生ローンまで入れて初めて並びます。
10万ポンド超の昇給を扱うとき
個人手当の逓減で実効60%の帯に入ります。 年金拠出との組み合わせを考える場面です。
給与明細に違和感があるとき
国民保険料は期間ごとの計算なので、変則的な月は見た目が跳ねます。
サラリーサクリファイスを検討するとき
所得税と国民保険料が同時に動くため、手取りで見るのが確実です。
この分野の用語
- 個人手当(Personal Allowance)
- 所得税がかからない基礎的な控除枠です。10万ポンドを超えると2ポンドにつき1ポンドずつ失われます。
- 国民保険料(National Insurance)
- 年金や給付の財源となる保険料です。給与支払期間ごとに計算され、年末に均されません。
- スコットランド所得税
- スコットランド議会が定める独自の税率区分です。国民保険料は全英共通です。
- 学生ローン返済
- 所得がしきい値を超えた部分に対して一定率で天引きされます。プランごとにしきい値と率が違います。
- 実効限界税率
- 追加で得た1ポンドのうち、実際に手元に残らない割合です。10万ポンド超の帯では60%に達します。
- サラリーサクリファイス
- 給与の一部を年金拠出などに振り替える仕組みです。所得税と国民保険料の双方が軽くなります。
よくある質問
余談ですが ― なぜイギリスは所得税と国民保険料を別々に徴収するのですか?
所得税と社会保障を1つの給与天引きにまとめている国も多い中、イギリスは所得税(Income Tax)と国民保険料(National Insurance)を全く別の制度として、異なる法律のもとで、歴史的にも異なる目的のために徴収し続けています。所得税は一般的な政府支出の財源であるのに対し、国民保険料はもともと「働いている間に納めておくことで、後に国家年金や一部の給付を受け取る権利を得る」という拠出制の仕組みとして設計されました。
スコットランドが独自の所得税率を設定できるようになったのは比較的最近のことで、2016年のスコットランド法(Scotland Act 2016)がきっかけです。それ以来、スコットランド議会は英国の他地域から徐々に独自路線を進め、税率帯を3段階から6段階に増やし、しきい値も独自に調整してきました。一方でウェストミンスター(英国議会)が定める国民保険料は英国全土で変わらず同一です。そのため、同じ給与でも住んでいる場所が国境のどちら側かによって所得税額が変わる一方、国民保険料はまったく同じという状況が生まれます。
£100,000〜£125,140の間で実効限界税率が60%になる現象は、イギリスの税制の中でもとりわけ直感に反する仕組みの1つですが、実は独立した税率帯があるわけではありません。40%の高税率に、基礎控除が徐々に失われていく効果が重なっているだけです。この範囲では所得£2につき基礎控除が£1減るため、課税所得は額面所得より1.5倍速いペースで増えていきます。だからこそ、この区間の限界税率は多くの人が想像する40%ではなく、40%×1.5=60%になるのです。