メキシコ退職清算金計算(Calculadora de Finiquito y Liquidación)

メキシコの退職清算金(finiquito)と解雇補償金(liquidación)を、年収・勤続期間・離職理由から自動計算します。不当解雇・正当解雇・自己都合退職での受取額の違い、プリマ・デ・アンティグエダの上限も確認できます。

離職の種類による補償金の違い

メキシコでは離職の理由によって、liquidación(解雇補償金)とプリマ・デ・アンティグエダ(勤続手当)が発生するかどうかが異なります。

離職の種類 Liquidación プリマ・デ・アンティグエダ
不当解雇(despido injustificado) 3か月分+勤続1年につき20日分 勤続年数を問わず発生(12日/年)
正当解雇(despido justificado) 発生なし 勤続年数を問わず発生(12日/年)
自己都合退職(renuncia voluntaria) 発生なし 勤続15年以上のみ発生(12日/年)

いずれの離職理由でも、アギナルドの日割り・未消化有給休暇・プリマ・バカシオナルなどのfiniquitoは別途発生します。

メキシコの退職清算金(Finiquito)・解雇補償金(Liquidación)とは

メキシコでは、雇用関係が終了する理由を問わず、雇用主は退職者に対して「finiquito(退職清算金)」を支払う義務があります。finiquitoには、アギナルド(年末賞与、法定最低15日分)の日割り精算分、未消化の年次有給休暇の買い上げ分、そしてその25%以上に相当するプリマ・バカシオナル(休暇手当)が含まれます。これに加えて、解雇が「despido injustificado(不当解雇)」と判断される場合は「liquidación(解雇補償金)」が発生し、憲法上の補償金(3か月分の給与)と勤続1年につき20日分の給与が加算されます。

さらに、勤続年数に応じた「プリマ・デ・アンティグエダ(勤続手当)」という第三の要素があります。これは解雇(正当・不当を問わず)であれば勤続年数にかかわらず発生し、自己都合退職の場合は勤続15年以上でのみ発生します。算定基礎となる日給は、連邦労働法第486条により一般地区の最低賃金の2倍が上限とされ、高収入の労働者ほどこの上限の影響を受けやすくなります。このツールは年間総支給額・契約期間・離職の種類を入力するだけで、これらの内訳を含めた受取見込み総額を試算します。

この計算に使っている基準

税率・保険料率などの法定の値は、次の公的機関が公表しているものを使用しています。制度改正により変わることがあるため、重要な判断をされる際は一次情報もあわせてご確認ください。

Finiquito・Liquidación計算の使い方

  1. 年間総支給額を入力する 税・社会保険料控除前の、アギナルド・プリマ・バカシオナルを含まない年間基本給を入力します。
  2. 契約開始日と契約終了日を入力する 契約終了日は、離職(解雇または退職)が実際に効力を持つ日を指定します。
  3. 未消化の有給休暇日数を入力する 離職時点でまだ取得していない年次有給休暇の日数を入力します。
  4. 離職の種類を選び、結果を確認する 不当解雇・正当解雇・自己都合退職のいずれかを選ぶと、finiquito・liquidación・プリマ・デ・アンティグエダの内訳と受取見込み総額が表示されます。

使いこなすためのヒント

  • このツールが示すのは連邦労働法上の最低額です。労働協約(contrato colectivo de trabajo)や個別の雇用契約でこれを上回る補償が定められている場合は、そちらが優先されます。
  • プリマ・デ・アンティグエダの算定基礎の上限(最低賃金の2倍)は毎年1月1日に改定されるため、翌年に計算する場合は最新の一般地区最低賃金を確認してください。
  • 実際の解雇の正当性は、労働不服審判所(Tribunal Laboral)や連邦・地方の労働当局の判断で覆ることがあります。会社側が「正当解雇」と主張していても、労働者側がそれを不服として争うことができます。
  • finiquito・liquidaciónの受取額には、所得税(ISR)の非課税枠が適用される部分と課税対象になる部分があります。正確な税務上の扱いは個別に確認してください。
  • 北部国境自由貿易区(Zona Libre de la Frontera Norte)では一般地区より高い最低賃金が適用されるため、該当地域で働いている場合はプリマ・デ・アンティグエダの上限額も異なります。

こんなときに使えます

会社から提示された解雇条件を事前に確認したい

法律上の最低受取額をこのツールで試算し、実際に提示された金額と比較することで、法定額どおりなのか、それを下回っていないかを把握できます。

不当解雇と正当解雇でどれだけ金額が変わるか比較したい

同じ勤続年数・給与でも、離職の種類によってliquidaciónの有無が変わります。離職理由を切り替えて差額を確認できます。

長期勤続者のプリマ・デ・アンティグエダを試算したい

勤続年数が長いほどプリマ・デ・アンティグエダの金額は大きくなりますが、算定基礎には最低賃金の2倍という上限があります。高収入の場合、上限が適用されるかどうかも確認できます。

退職前にアギナルド・有給休暇の精算額を把握したい

離職理由に関わらず発生するfiniquito部分(アギナルド・有給休暇・プリマ・バカシオナル)だけを事前に確認しておきたい場合にも使えます。

用語集

Finiquito(フィニキート)
雇用関係が終了する際に、離職理由を問わず雇用主が支払う清算金です。アギナルドの日割り分・未消化有給休暇の買い上げ分・プリマ・バカシオナルから構成されます。
Liquidación(リキダシオン)
不当解雇(despido injustificado)の場合にのみ発生する補償金です。憲法上の補償金(3か月分)と勤続1年につき20日分の給与から構成されます。
プリマ・デ・アンティグエダ(Prima de Antigüedad)
勤続年数に応じた手当で、勤続1年につき12日分の給与(算定基礎は最低賃金の2倍が上限)です。解雇であれば勤続年数を問わず、自己都合退職の場合は勤続15年以上でのみ発生します。
アギナルド(Aguinaldo)
メキシコで法律上義務付けられている年末賞与です。法定最低日数は15日分の給与で、離職時には当年の勤務日数に応じて日割り精算されます。
プリマ・バカシオナル(Prima Vacacional)
年次有給休暇に対して追加で支払われる休暇手当です。法定最低率は未消化有給休暇の精算額の25%です。

よくある質問

finiquitoは離職理由を問わず必ず発生する清算金で、アギナルドの日割り・未消化有給休暇・プリマ・バカシオナルから構成されます。liquidación(解雇補償金)は不当解雇(despido injustificado)の場合にのみ発生する、別の補償金です。

原則としてもらえません。自己都合退職(renuncia voluntaria)の場合、liquidaciónは発生せず、finiquito(アギナルド・有給休暇・プリマ・バカシオナルの精算)のみが支払われます。ただし勤続15年以上であれば、プリマ・デ・アンティグエダは受け取れます。

解雇の場合(正当・不当を問わず)は勤続年数にかかわらず発生します。自己都合退職の場合は勤続15年以上のときのみ発生します。算定基礎となる日給には、一般地区最低賃金の2倍という上限があります。

連邦労働法第47条が定める、労働者側の重大な違反行為(無断欠勤・暴力行為・機密漏洩など)を理由とする解雇です。この場合liquidaciónは発生しませんが、finiquitoとプリマ・デ・アンティグエダ(勤続年数を問わず)は発生します。

法定の最低額を下回る清算は認められません。提示額に納得できない場合は、労働不服審判所(Tribunal Laboral)への申し立てや、労働弁護士(abogado laboralista)への相談を検討してください。
ツールくん

余談ですが ― なぜメキシコの解雇補償金は「3階建て」になっているのか

メキシコの解雇補償金制度を初めて知ると、finiquito・liquidación・プリマ・デ・アンティグエダという3つの異なる要素が並んでいることに戸惑うかもしれません。この構造は、1917年のメキシコ憲法第123条が「労働者の権利」を国家の基本法として位置づけたことに起源があります。当時のメキシコ革命後の労働運動は、単なる解雇予告や退職金という発想を超えて、雇用関係の終了そのものに複数の異なる保護を積み重ねる方向へ発展しました。

finiquitoは「働いた分は必ず支払われる」という最も基本的な原則を体現しています。解雇であれ自己都合退職であれ、すでに発生した権利(未消化の休暇、按分された賞与)は雇用主の裁量で消えることはありません。一方でliquidaciónは、憲法第123条A項22号が定める「正当な理由のない解雇は補償を要する」という、労働者の雇用の安定性を保護する仕組みです。そしてプリマ・デ・アンティグエダは、勤続年数そのものに価値を認める、日本の退職金制度にも通じる発想の手当です。

興味深いのは、プリマ・デ・アンティグエダだけが「自己都合退職でも15年以上勤めていればもらえる」という特殊な設計になっている点です。これは、短期間で転職を繰り返す労働者と長期間同じ会社に貢献した労働者を区別し、後者の勤続に報いるという立法趣旨によるものとされています。算定基礎に最低賃金の2倍という上限が設けられているのは、高所得者ほど手当の絶対額が青天井に膨らむことを防ぎ、この手当を本来想定していた「長期勤続への感謝」という性格に近づけるための調整と考えられています。