運動量保存・衝突計算ツール(弾性衝突・非弾性衝突・反発係数の公式付き、無料)

2物体の1次元衝突を無料で計算できる物理ツールです。運動量保存則・エネルギー保存則の公式を表示しながら、完全弾性衝突・完全非弾性衝突・反発係数を指定した部分弾性衝突の3モードで衝突前後の数値を比較できます。物理の授業の検算や宿題の確認にも活用できます。

運動量保存則と衝突計算とは

このツールは、2つの物体が一直線上で衝突する場面を対象に、衝突前の質量・速度から衝突後の速度を計算する物理計算機です。完全弾性衝突・完全非弾性衝突・反発係数を指定した部分弾性衝突の3モードを切り替えられるため、教科書の公式がどの数値に対応するのかを実際の計算結果で確認できます。

計算の前提となるのは、外部から力が働かない「閉じた系」であることです。摩擦・空気抵抗・重力の鉛直成分などの外力を無視できる1次元の衝突を想定しているため、実験結果や斜め衝突・多体衝突をそのまま再現するものではありません。運動量の合計は3モードすべてで衝突前後で保存されますが、運動エネルギーの合計は完全弾性衝突(e=1)でのみ保存され、それ以外では一部が熱・音・変形のエネルギーとして失われます。

運動量保存計算ツールの使い方

  1. 衝突のモードを選ぶ 「完全弾性衝突」「完全非弾性衝突」「反発係数を指定」の3モードから、確認したい衝突の種類を選びます。迷ったら反発係数モードでe=1やe=0にすると他の2モードと同じ結果になることを確かめられます。
  2. 物体1・物体2の質量を入力する m₁とm₂にそれぞれ正の数値を入力します。単位はkgでもgでも構いませんが、2つの物体で単位をそろえてください。
  3. 物体1・物体2の衝突前の速度を入力する v₁とv₂に衝突直前の速度を入力します。正の値は基準方向への運動、負の値は逆方向への運動を表すため、正面衝突と追突を区別できます。
  4. (反発係数モードのみ)反発係数eを入力する 0〜1の範囲でeを入力します。数値を動かすたびに結果が自動更新されるため、eによって衝突後の速度がどう変化するかを連続的に確認できます。
  5. 衝突後の速度と保存量の比較結果を確認する 衝突後速度v₁'・v₂'に加えて、運動量の合計・運動エネルギーの合計が衝突前後でどう変わったかが自動で表示されます。

使いこなすためのヒント

  • 質量はどちらも正の数を入力してください。速度は負の値も入力でき、負の速度は逆方向への運動を表します。
  • 「反発係数を指定」モードでeを1にすると完全弾性衝突と、0にすると完全非弾性衝突と全く同じ結果になります。3つのモードのつながりを確認するのに便利です。
  • 運動量の合計は衝突の種類によらず常に衝突前後で一致します。これは外力が働かない閉じた系における運動量保存則そのものです。
  • 運動エネルギーの合計は完全弾性衝突でのみ保存され、非弾性衝突では熱や音・変形のエネルギーとして失われます。「失われた運動エネルギー」の欄で損失量を確認できます。
  • 自動車の衝突安全設計は、あえて車体を変形させて非弾性衝突に近づけ、乗員に伝わる衝撃を和らげる考え方に基づいています。

運動量・衝突計算の活用シーン

物理の宿題・定期試験の検算

力学の授業で出される衝突問題の答え合わせに使えます。自分で立てた式の答えとツールの計算結果を照らし合わせることで、公式の当てはめ間違いに気づけます。

衝突実験レポートの理論値との比較

台車やビー玉を使った衝突実験の実測値と、このツールが出す理論上の衝突後速度を比較すれば、実験でどれだけエネルギーが失われたか(=反発係数がいくつに相当するか)を見積もる材料になります。

交通事故の速度解析の基礎学習

自動車同士の追突・正面衝突を単純化した1次元モデルとして扱い、衝突後の速度がどう決まるかの基礎を学ぶのに使えます(実際の事故解析はタイヤ痕や車体変形量など多くの要因を考慮するため、このツールの結果をそのまま鑑定に使うことはできません)。

スポーツ用具の反発係数のイメージづくり

野球・ゴルフ・卓球など反発係数が規格で定められているスポーツ用具について、eの値を変えながら衝突後の速度がどう変わるかを試すことで、規格が性能にどう影響するかを直感的に理解できます。

入試・資格試験対策での公式の丸暗記からの脱却

弾性衝突・非弾性衝突・反発係数の3つの公式を別々に覚えるのではなく、反発係数モードのeを0や1にすると他の公式と一致することを確かめれば、公式同士のつながりを理解した状態で覚え直せます。

運動量・衝突に関する用語集

運動量(momentum)
質量と速度の積(p=mv)で表される物理量です。ベクトル量のため向きを持ち、外力が働かない系では衝突の前後で合計が変化しない「運動量保存則」が成り立ちます。
弾性衝突(elastic collision)
衝突前後で運動量の合計と運動エネルギーの合計の両方が保存される衝突です。ビリヤードの球やニュートンのゆりかごの金属球が近い例として知られています。
非弾性衝突(inelastic collision)
運動量の合計は保存されますが、運動エネルギーの一部が熱・音・変形のエネルギーとして失われる衝突です。2物体がくっついて同じ速度になる場合を特に「完全非弾性衝突」と呼びます。
反発係数(coefficient of restitution)
衝突の跳ね返りやすさを0〜1の数値で表したものです。衝突後の相対速度の大きさを衝突前の相対速度の大きさで割った値として定義され、e=1で完全弾性衝突、e=0で完全非弾性衝突と一致します。
運動エネルギー(kinetic energy)
運動する物体が持つエネルギーで、KE=(1/2)mv²で計算されます。運動量とは異なりスカラー量(向きを持たない量)で、弾性衝突以外では衝突前後で合計が減少します。
閉じた系(closed system)
外部から力(外力)が働かない、あるいは外力の影響を無視できる物体の集まりを指します。運動量保存則は閉じた系でのみ厳密に成り立ちます。
相対速度(relative velocity)
一方の物体から見たもう一方の物体の速度です。反発係数は衝突前後の相対速度の比として定義されるため、2物体の速度差に着目することが衝突計算の理解の鍵になります。

よくある質問

弾性衝突は運動量と運動エネルギーの両方が衝突前後で保存される衝突です。非弾性衝突は運動量は保存されますが、運動エネルギーの一部が熱・音・変形のエネルギーに変わって失われます。2物体がくっついて一体になる「完全非弾性衝突」は、同じ運動量のもとで運動エネルギーの損失が最大になる特殊なケースです。

反発係数(e)は衝突の「跳ね返りやすさ」を0〜1の数値で表したものです。e=1(完全弾性衝突)は衝突前後で相対速度の大きさが変わらない理想的な衝突、e=0(完全非弾性衝突)は衝突後に2物体が同じ速度になる衝突を表します。実際の物体同士の衝突はほとんどがこの中間の値を取ります。

外部から力が働かない閉じた系では、ニュートンの運動の第三法則(作用・反作用の法則)により、2物体が衝突中に及ぼし合う力は大きさが等しく向きが逆になります。この力を衝突時間で積分すると、2物体の運動量変化は符号が逆で大きさが等しくなるため、系全体の運動量の合計は衝突前後で変化しません。

複数の金属球を糸で吊るし、端の球を持ち上げて放すと、反対側の端の球だけが同じ高さまで跳ね上がる有名な玩具です。球同士の衝突がほぼ完全弾性衝突に近いため運動量と運動エネルギーがほぼ保存され、間の球はほとんど動かずに衝撃だけが順番に伝わっていく現象を目に見える形で示しています。

質量が等しい場合、完全弾性衝突の公式は単純化され、2物体の速度がそのまま入れ替わります(静止していた物体は衝突前の相手の速度で動き出し、衝突してきた物体は静止します)。ビリヤードの球同士の衝突がこの特殊ケースに近い代表例です。
ツールくん

余談ですが ― 反発係数という発想はどこから来たのか

反発係数(coefficient of restitution)という概念を実験的に整理したのは、17世紀の科学者アイザック・ニュートンだとされています。ニュートンは様々な材質の球を落として跳ね返る高さを測定し、衝突前後の相対速度の比がほぼ一定の値になることを見出しました。これが後に運動の法則と並ぶ、衝突現象を定量的に扱うための重要な道具となりました。

興味深いのは、反発係数が0から1の間に収まるものの、同じ材質・同じ物体同士でも衝突速度や温度によって値がわずかに変化する点です。これは反発係数が物理法則というよりも、材料の弾性変形の性質を近似的にまとめた経験則に近い性格を持つためです。野球のボールやゴルフボールの反発係数は、スポーツ用品の規格で上限が細かく定められており、公式戦で使用できる用具の性能を制限する役割も果たしています。

完全弾性衝突(e=1)は理論上の理想であり、原子・分子レベルのごく小さなスケールを除けば、日常のマクロなスケールで厳密に実現することはまずありません。ビリヤードの球やニュートンのゆりかごの金属球はこれに近い高い反発係数を持ちますが、わずかな音や熱としてエネルギーが漏れ出しています。逆に完全非弾性衝突(e=0)に近いのは、粘土同士の衝突や、自動車が壁に激突して変形して止まるような場面です。